交雄会新さっぽろ病院 消化器内科 佐々木貴弘
今月のブログはタイトルの通り、便秘についてお話ししていきます。今回は便秘になったらどうしたら良いか?そして、まずは自分でできる事は何か?をお話させていただき、次回後編として便秘を改善するお薬の話をしたいと思います。
便秘の有病率は10~15%程度と言われており、程度は個人差がありますが実に10人に1人は便秘を患っていると考えられています。特に60歳後半以降は年齢とともにその数は増加していきます。若い人で便秘の症状感じるのは女性の方が多くなっておりますが、70歳代以後は男女ともに差は認めなくなります。つまり、今便秘の症状がなくても年齢を重ねるとともに便秘の症状が出てくる方も多くいるということになります。(図1)
では、いざ便秘になった場合どうしたら良いでしょうか?
まずは便秘の原因を知ることが必要です。便秘には今飲んでいる薬が原因になったり、便秘を引き起こす病気が隠れていることもあります。特に、放置しておくと命にかかわる病気が潜んでいることがあります。
それは大腸癌です。(図2)
大腸癌を初めとした悪性の腫瘍や全身の病気が潜んでいるかもしれない症状のことを警告症状と呼びます。その警告症状とは…
体重減少
発熱や関節痛
血便
急な便通の乱れ(便が細くなった、便が出づらくなった など)
便秘に加えてこのような症状がみられる場合には大腸以外にも全身の病気が潜んでいることがありますので、まずはお近くの病院で相談しましょう。
特に私たち消化器内科としては大腸癌が潜んでいないかどうかをまず調べる必要があります。なので、急に便秘するようになった方は前回のブログでご紹介した大腸カメラをぜひ一度は受けて頂くことをオススメします。
また、お薬でも便秘が副作用として出てくるものもありますので、便秘が続く場合にはお薬を処方してくれている先生に一度相談してみるのも良いと思います。
大腸カメラやかかりつけの先生に相談して、便秘の原因になる病気がなかった場合、どのように治療していくのか。それを次にお話していきたいと思います。
まずはすぐに便秘薬……ではなく、普段の食生活を見直してみましょう。
便がかた~くなることが便秘の原因の一つとなります。便が硬い状態はどのような状態なのか?というと、水分が少ない便が硬い便つまり便秘の原因になることがあります。そのため、普段水分摂取が足りないなと感じる方はこまめな水分摂取をする事が大切であると思います。ですが、慢性便秘の方は水分だけではやはり十分な効果が得られないことが多くあります。そのため、水分摂取とともに摂取する食事にも気を付けて頂くことが必要になります。便は食べたものが最終的に排泄されていく形です。そのため、食事に気を付けることで便通改善を期待する事ができます。
どんな食事が便秘に良いのか?と、気になるところですよね。
便秘にいいのは食物繊維!というのはどこかで聞いたことがあるかもしれません。その通り、食物繊維の摂取は便通改善に効果があります。では、食物繊維には2種類あることをご存じでしょうか?食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維という2種類が存在し、それぞれ別々の効果により便秘の解消につながっていきます。
水溶性食物繊維
→水分を保持して便を軟らかくする。 摂りすぎると下痢になる可能性がある。
不溶性食物繊維
→便のカサを増やして腸の蠕動運動を促す。 摂りすぎると便秘になる。
(図3)(図4)(図5)
それぞれ効果が異なりますので、どちらかを取りすぎることもまた便秘や下痢などの便通の異常につながります。便が硬くて困っている方には水分を増やす食事摂取を、便意がなかなか感じづらい方には蠕動を促す食事摂取を、バランスよくご自身の症状に合わせて摂取して頂くのが良いと思います。
また、同じ食物繊維を摂取していても普段の活動性が低い方よりも活動性の高い方の方が食事の効果が出やすいと言われていますので、食事だけではなく、適切な有酸素運動なども取り入れてみるとより効果的な便通改善が得られることと思います。
今回は前編としてまずは自宅でできることからお話していきました。
次回は後編として便秘薬についてお話してきたいと思います。
便秘で困っている方、また便秘に限らず胃腸の不調で悩んでいる方はいつでも気軽に病院までお問い合わせください。