胃ポリープと早期胃癌
- HEIWA SOTOMURA
- 9月19日
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北澤 俊治
「毎年胃カメラで胃にポリープがたくさんあるっていわれて心配だ」という患者さんはいらっしゃると思います。われわれ内視鏡医は、なんともないポリープと分かっていても、患者さんは「できもの≒悪いもの」だと思ってしまうこともあると思います。
ポリープとは病理組織学的に上皮性・非上皮性のもの、つまり隆起しているものはすべて含まれます。よく遭遇する胃のポリープは、胃底腺ポリープと過形成性ポリープです。
胃底腺ポリープは基本的にピロリ菌(Helicobacter pylori)未感染胃で多発します(ピロリ菌除菌後でも認められることはある)。従って、胃底腺ポリープを認める胃は、ピロリ菌陰性のとてもきれいな胃で、胃癌にも基本的には(ゼロではない)なりにくい胃と言えます。これに対し胃過形成性ポリープはピロリ菌陽性の所見で、ピロリ菌除菌で退縮・消失することがあります。統計的に胃過形成性ポリープの1.5~4.5%に癌が併存していると報告されています。胃底腺ポリープと胃過形成性ポリープは内視鏡で鑑別診断可能です。
一方、ポリープ状の早期胃癌は0-Ⅰ型早期胃癌と呼ばれます(胃癌取り扱い規約)。0-Ⅰ型早期胃癌には、ポリープ状隆起全体が腺癌の病変と、過形成性ポリープ内に腺癌を伴う病変の2種類が存在します。前者は内視鏡(通常観察、拡大NBIなど画像強調観察、生検)で診断可能ですが、後者の過形成性ポリープに癌が併存する場合は、時に内視鏡診断は難しく、診断的治療として内視鏡切除(内視鏡的粘膜切除術EMR~内視鏡的粘膜下層剥離術ESD)が選択されることがあります(完全生検→病理診断)。
現時点では、胃過形成性ポリープの治療はピロリ菌除菌が第一選択です。除菌で改善しないものや、大きくて貧血の原因となりうる病変は内視鏡治療が選択される場合もありますが、常に胃癌の合併を念頭に置いた治療法を検討する必要があります。