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便秘を知ろう! ~後編~

交雄会新さっぽろ病院 消化器内科 佐々木貴弘


前回2024年11月に便秘について前編ということで便秘になったらどうするか?自分自身で気をつけることはどんなことかお話ししました。今回は便秘について後編ということで、便秘薬についてお話ししていきたいと思います。


便秘薬は病院で処方される薬ももちろんありますが、薬局などでも多くの市販薬が販売されており、比較的身近な薬とも言えると思います。しかしその分種類も多く、どれを使ったら良いだろうか?私に合うのはどれかな?お腹が痛くなったりしないかな?と迷うこともあると思います。そこで今回は便秘薬の成分についてそれぞれお話ししていきます。


前回のブログでもお話ししたように、便秘治療はまず生活習慣や食生活の改善から取り組むことになります。それでも頑固な便秘の場合にそれではお薬を試してみましょうということになります。その時私たち医師が下剤を勧める順番が図のようになります。1)(図1)



図1
図1


まず初めに推奨される薬剤は浸透圧性下剤になります。その中で使用頻度の多い、塩類下剤・高分子化合物(PEG)について説明してきます。



浸透圧性下剤

塩類下剤:酸化マグネシウム 市販薬あり

酸化マグネシウムは以前より多く使用されてきた薬剤であり、病院などからも処方されている方も多いと思います。作用は便を軟らかくすることです。胃酸と反応した後に腸の中で水分を集めることで便を軟らかくします。


注意点

酸化マグネシウムはその効果を発揮するためには胃酸が必要になります。そのため、手術で胃を切除してしまっている方や胃酸を押さえる胃薬を飲んでいる方は効果がない可能性があります。また、腎臓の働きが落ちている方は血中のマグネシウムの濃度が上昇し副作用が出ることがありますので注意が必要です。


高分子化合物(PEG):モビコール 市販薬なし、処方のみ

2018年にから販売開始となった新しい下剤です。大腸カメラ前の下剤に近い薬で、水分を保持したまま大腸に届き、便を軟らかくし、便容量を増やして腸の動きを亢進します。比較的安全に使用可能な薬であり、子供や高齢者にも使用が可能です。第一選択として使用される場面が多くなってきている薬です。



上皮機能変容薬

小腸の水分分泌を増やして便を軟らかくする


ルビプロストン:アミティーザ 市販薬なし、処方のみ

2012年から処方可能となった比較的新しい下剤です。1日2回内服が標準的で、空腹時に内服すると吐き気が出ることがあるので食後に内服するのが良いです。


リナクロチド:リンゼス 市販薬なし、処方のみ

2017年から処方可能となった比較的新しい下剤です。1日1回食前に内服することが標準的で食後に内服すると下痢しやすいとされています。もともと過敏性腸症候群に使用されていた薬であり、知覚神経の過敏性を改善するため腹痛を伴う場合には腹痛を軽減する効果もあります。



胆汁酸トランスポーター阻害薬

エロビキシバット:グーフィス 市販薬なし、処方のみ

2018年から処方可能となった比較的新しい下剤です。1日1回食前に内服することが標準的で食事によって胆汁酸が分泌される前に内服しておくのが良いです。胆汁酸は大腸内で水分分泌を促進し、腸管蠕動を促進します。本来胆汁酸は大腸で吸収されますが、その吸収を抑えることで便を軟らかくし腸の動きを亢進します。


注意点

 腸の動きを亢進するので腹痛が出現することがあります。



ここまでの薬は私たち医師が下剤としてまず処方するお薬として多いものになります。効果としては主に便を軟らかくするか、腸の動きを活発にするか、このどちらの症状なのかあるいは両方なのかを見極めてお薬を選んでいきます。


つまり…

  • 便が硬い!という方には便が軟らかくなる薬

  • 便がしたいという感じがない!という方には腸の動きを活発にする薬

を選ぶのが良いと思います。


ただ、よくよく見てみるとここまでの薬で市販薬として手に入るものは酸化マグネシウムの便を軟らかくする薬しかありませんね。では、腸の動きを良くする薬は市販薬ではないのでしょうか?実はこの他にもまだ種類の異なる下剤があります。ただし、これから説明する下剤には注意点もありますので、順に説明していきます。



刺激性下剤 市販薬あり

  • アントラキノン系:センノシド、センナ、大黄

  • ジフェニール系:ピコサジル・ピコスルファート

どちらも大腸を刺激して、腸管の動きを活発にします。さらにその下剤としても効果は比較的強いです。

注意点

習慣性や耐性が生じます。つまり、効果が強いため毎日のように使っていると、段々と効果が悪くなってきてしまい、クセになってしまいます!

特にアントラキノン系の下剤は長期使用すると偽メラノーシスという大腸粘膜の変化を起こし、腸管の動きが悪くなる弛緩性の便秘を引き起こすことがあります。(図2)



図2
図2

つまり、下剤を飲んでいたはずがいつの間にかそれが原因で便秘になってしまうことにもなります。しかし、刺激性の下剤をやめることができれば時間はかかっても元に戻る場合がありますので困っている場合には主治医や近くの医師に相談することをお勧めします。



漢方薬 市販薬あり

漢方薬にも下剤効果のあるものが何種類かあります。

その中で大黄の成分が含まれているものは先にお話しした刺激背下剤であるアントラキノン系と同じ成分が入っていますので、長期使用には注意が必要です。


しかし、これらの刺激性下剤もどうしても出ないときに限るなど短期間使用であればとても効果のある下剤ですので、上手に使っていくことが重要になります。

下剤を選ぶ際にはまずご自身の便の状態をよく把握し、症状に合わせて下剤を選ぶ事が快便に繋がっていきます。また、漫然とした下剤の使用は更なる便秘の原因になることもありますので、便秘に悩んでいる方は一度病院へ相談する事をおすすめします。


前回と今回、2回に分けて便秘についてお話ししてきました。

少しでもみなさんの便秘解消の役に立つことができたらうれしいです。


便秘で困っている方、また便秘に限らず胃腸の不調で悩んでいる方はいつでも気軽に病院までお問い合わせください。



1)便通異常症ガイドライン 2023


 
 

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