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大腸内視鏡検査を受けましょう! ~早期発見・早期治療で「がん」を撃退~ 後編

交雄会新さっぽろ病院 消化器内科/内視鏡内科 青木 敬則


みなさん、こんにちは。前回は大腸カメラを受ける理由とその適応について説明しましたが、今回は大腸カメラを受ける前の準備 (前処置)、大腸カメラを用いた検査の実際 (挿入法・観察法)についてお話していきたいと思います。


1.大腸カメラを受ける前の準備 (前処置)

質の高い内視鏡検査を行う上で、検査前に大腸の中をきれいにすることが非常に重要です。下にお示ししているような患者さんもしくは家族からの情報収集や検査前処置の工夫は、検査を安全かつ確実に行う上で重要と考えています。

 

患者さんまたは家族からの情報収集(外来)

  • 検査の目的

  • 症状 

  • 体型 

  • 排便状況 

  • 既往歴・腹部手術歴 

  • 家族歴 

  • 薬剤内服状況(特に抗血栓薬、糖尿病薬)

  • 内視鏡検査・治療歴

  • 前処置歴

 

検査前処置の工夫

  • 食事指導

  • 大腸検査食の使用

  • 腸管洗浄剤・下剤の選択

 

当院では検査前処置に特に重きを置いており、パンフレットを用いた検査数日前からの食事指導や排便形状、過去の大腸内視鏡検査回数、過去に服用した腸管洗浄剤の種類と服用後の感想などの追加アンケートを行っています(図1)。



図1
図1


このような取り組みを行うことで、患者さんに適した腸管洗浄剤の選択が可能となり、良好な腸管洗浄力を得ることで質の高い大腸内視鏡検査を行うことができるようになると考えています。


当院で使用している外来大腸カメラ前処置の詳細は図2に記載しています。薬剤の詳しい内容については、当院外来受診時に確認していただければと思います。


図2
図2


2. 大腸カメラを用いた検査の実際 (挿入法・観察法)

大腸カメラの流れは、以下の通りです。

  • 肛門から回腸末端または盲腸まで 深部挿入

  • 盲腸から肛門まで順番に観察

  • 途中でポリープが見つかったら詳しく病変を観察し、必要に応じて切除する

  • 挿入と観察で平均20分前後だが、 挿入が難しい方やポリープがたくさんある方は追加で時間がかかる

 

大腸カメラ挿入のポイントについて説明します。挿入のポイントとしては、適切な大腸カメラの選択、患者さんに合わせた鎮痛剤・鎮静剤の選択、苦痛のない挿入法の実践、苦痛のない挿入を目指した工夫、が挙げられます。


(1)   適切な大腸カメラの選択

大腸カメラの選択に関しては、挿入困難の危険因子を念頭に置くことが重要と考えています。例えば、小柄な方・痩せている方・腹部手術による癒着が想定される方・憩室が多発している方は細くて軟らかいカメラを使用すると苦痛が出にくいですし、逆に体格が大きい方・肥満傾向の方は太径で硬いカメラを使用した方がスムーズに挿入できることが多いです。また、検査目的によるカメラ選択も大切です。病変を詳しく見る時は拡大機能付きのカメラ、内視鏡治療を行うときは送水機能付きのカメラを使用することが多いです。


(2)   患者さんに合わせた鎮痛剤・鎮静剤の選択

大腸カメラは腸の動きを一時的に抑える薬の使用のみでも行える検査ですが、患者さんによっては痛み止めや眠り薬を選択することも必要です。当院での鎮痛剤・鎮静剤使用の適応基準は、過去の大腸カメラで苦痛を伴った方、腸の動きを抑える薬の効果が乏しい方、検査に不安がある方、などとしています。当院で主に使用する鎮痛剤・鎮静剤は、ペチヂン塩酸塩、ミダゾラム、ジアゼパムとしています。


(3)   苦痛のない挿入法の実践

大腸カメラを行う上で苦痛のない挿入をすることも重要です。私が理想とする大腸カメラ挿入は「軸保持短縮法」に基づいた挿入です。この方法は、直腸、SD junction、脾彎曲部、肝彎曲部、盲腸、の5つの固定点を結ぶ仮想線を“軸”と想定し、腸管の形状を軸に一致するように修正し、最短ルートで挿入するという方法です。この方法で挿入できれば苦痛はほとんどないとされていますが、全ての患者さんでこの方法を用いることができるわけではありませんので、状況に応じて適宜工夫しています。


(4)   苦痛のない挿入を目指した工夫

苦痛のない挿入を行う上での工夫として、体位変換、用手圧迫、二酸化炭素送気の使用が挙げられます。

体位変換は、重力に伴う腸管ガスの移動を利用した工夫です。左側臥位では腸管ガスが上行結腸・右側横行結腸・直腸に移動するため、肝彎曲や直腸S状部の屈曲がゆるくなって挿入しやすくなりますし、右側臥位では腸管ガスが下行結腸・左側横行結腸・S状結腸に移動するため、脾彎曲やSD Junctionの屈曲がゆるくなって挿入しやすくなります。

用手圧迫は腸管過長によるpush挿入の際に伸展予防で用いることもありますが、軸保持短縮法による挿入をする上でも大切です。その際のコツとしては、進行方向に見える口側腸管が近づいてくる場所を1-2本の指で探し、ピンポイントでゆっくり押すことです。

また、最近は大腸カメラを行う際に二酸化炭素送気を使用しています。空気より吸収が早いため、腸管の過伸展による苦痛が軽減され、安定した条件で挿入や観察・治療を行うことが可能となります。

 

続いて観察のポイントに移ります。先端アタッチメントや洗浄チューブを用いた観察、見落としやすい位置を理解した観察、AI技術を用いた観察、について説明します。

(1) 先端アタッチメントや洗浄チューブを用いた観察 (図3)


図3
図3

先端アタッチメントはカメラの先端に取り付けるもので、カメラを挿入しやすくしたり、ひだをめくって病変を探しやすくするのに用いられます。Non-traumatic tube・NTカテーテルは私が検査時によく使用している器具です。チューブ先端に直径3mm弱の球形金属チップを装着した送液が可能な洗浄チューブで、ヒダなどの視界の妨げとなるものを避けることが可能なほか、大きさを計測したりやカメラと病変との至適距離を保つ役目も担っています。


(2) 見落としやすい位置を理解した観察

盲腸口側、肝・脾彎曲、直腸S状部、下部直腸肛門縁などは比較的死角になりやすく見落としやすいと言われています。また上行結腸はヒダが深いため、平坦なポリープを指摘しにくいことがあるため注意しながら観察しています。


(3) AI技術を用いた観察

近年、内視鏡領域においてもAI技術が病変の発見や質的診断に活用されています。当院はオリンパス社のEndoBRAIN-EYEを導入しています。病変を指摘したら、病変を四角で囲み警告音で知らせてくれます。今後もさらに発展していくことが期待されます。



以上、今回は大腸カメラを受ける前の準備 (前処置)、大腸カメラを用いた検査の実際 (挿入法・観察法)について説明しました。大腸カメラを受けようと考えている方や受けることに躊躇(ちゅうちょ)されている方のお役に少しでもなれば嬉しく思います。

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